FIREのことを知ってから「4%ルール」って言葉をよく聞くけど、そもそも何のこと?
ぼくはなんとなく知ってるけど、4%ルールって本当に安全なの?
このような悩みを解決します。
この記事を読めば、次のことがわかるようになります!
4%ルールとは?
4%ルールとは、インデックス投資の出口戦略の1つです。
インデックス投資の出口戦略とは、投資ポートフォリオをできるだけ減らさずに、最大限に取り崩して不労所得を得る戦略のことをいいます。
4%ルールでは「リタイア時に持っていた資産の4%(定額)を毎年取り崩すようにすれば、資産が底を尽きる可能性はほぼ0に近い」と考えられています。
このルールは、米国テキサス州・トリニティ大学の3人の教授による研究(トリニティ・スタディ)が元になっています。
えぇ!?
4%ずつ取り崩してたら、25年で資産が0円になっちゃわない?
普通に考えるとそうなりますよね。しかし、投資の複利効果により、0円にならないんです。
まずは「4%ルール」という考え方が生まれた元となった研究について見ていきましょう!
トリニティ・スタディ(Trinity Study)とは
トリニティ・スタディとは、投資ポートフォリオ(株式・債券の組み合わせ)をできるだけ減らすことなく、リタイアした後の生活を長く続けるための合理的な引き出し率を調査した研究です。
1998年2月に発表されました。
Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable
Philip L. Cooley, Carl M. Hubbard, and Daniel T. Walz
この研究では、1926年から1995年の米国市場の数字を元に、引き出し率・引き出し期間・投資ポートフォリオの組み合わせを合計200パターンに分けて検証しています。
4%ルールの根拠
それでは、4%ルールの根拠になった研究結果を一部見ていきましょう。
表1は、株式50%:債券50%の投資ポートフォリオから、15〜30年間、毎年3〜12%ずつ取り崩した結果、資産が0にならずに済む確率を調べたものです。
引き出し率が3〜4%の部分に着目すると、資産が0にならずに済む確率は、限りなく100%に近いことがわかります。
引き出し率が3%のほうが安全だから、3%じゃないんですかね?
確かに、3%のほうが保守的です。
さらにいうと、この研究では、引き出し率4%が最適だという結論ではなく、あくまで3〜4%が保守的であると結論づけています。
えぇ!?じゃぁなぜ「4%」ルールなの?
わたしの考えを言います。
この研究の引き出し期間は、60歳で引退後の平均寿命をもとに設定されているとお話しました。
つまり、ほとんどの人は、引退から30年後には亡くなると想定されています。
そしてこの研究は、資産を守ることを第一の目的としているわけではなく、合理的な引き出し率(言い換えると、資産を守りながら生活水準を不必要に下げない引き出し率)を調査しているものになります。
引き出し率を3%→4%にしたとしても、30年後に資産が余る確率は100%→95%になるだけです。
より合理的なのは、引き出し率3%ではなく4%だと言えると思います。
4%ルールを使ったFIRE達成に必要な資金の計算方法
4%ルールの考え方を使うと、FIRE達成に必要な資産を求めることができます。
具体例を1つ挙げます。
年間支出が300万円の場合、FIREに必要な資産は、300万円×25=7,500万円になります。
7,500万円の資産があれば、毎年4%(300万円)を引き出すことで、向こう30年間は資産が0になりません。
つまり、働かなくても生活していける、経済的に自立した状態となります。
非常にシンプルな式で求めることができるので、FIRE界において4%ルールというのは、とても役に立つ考え方ですね。
FIREにおける4%ルールの注意点
しかし、便利な4%ルールにも注意しなければならないことがあります。
早期退職については考慮されていない
トリニティ・スタディでは、60歳で定年退職するケースをもとにしているため、平均寿命から考えて、引き出し率は最大で30年でした。
つまり、FIRE(経済的に自立して、早期退職すること)については言及されていません。
もし、引き出し率が40年、50年と長期に渡ったらどうなるでしょう?
もう一度表1をみていただくとわかりますが、長期になればなるほど、確率は下降しています。

つまり、退職時期が早ければ早いほど、引き出し率はさらに保守的になるべきだということを、表1は教えてくれます。
税金や取引コストは考慮されていない
日本では、投資ポートフォリオから資産を引き出したとき(株を運用して利益を上げたとき)、一律20%(所得税15%、住民税5%)の税金が課されます。
また、インデックスファンドの運用管理費用(信託報酬)や取引手数料などの取引コストもかかります。
トリニティ・スタディでは、これらのコストは無視されています。
つまり、引き出し率4%と設定すると、実際の引き出し率は3.2%になります。
為替リスクが考慮されていない
トリニティ・スタディはアメリカの研究です。
投資ポートフォリオも米国の株式インデックスファンドや社債で構成されているため、日本で同じポートフォリオを作るとなると、為替リスクが発生します。
結局のところ、4%ルールってどうなの?
FIREをめざすなら、4%ルールよりも3%ルールにしたほうがいいってことかな?
個人的には4%のままでいいと思います。
トリニティ・スタディでは、アメリカのインフレ率(平均約3%)をもとに研究されています。
一方、日本のインフレ率は、約1%です。
インフレリスクを考慮すると、米国よりも余裕があります。
さらに、トリニティ・スタディの研究には、続きがあります。
表2は、30年間、毎年4〜7%ずつ取り崩した結果、もともとの資産(例:1000ドル)が最終的にいくらになったかを調査したものになります。(実際の研究では、もっと多くのパターンで検証されています。)

中央値に着目してみましょう。
毎年4%で30年間引き出し続けたとしても、なんと資産が5倍に増加しています。
平均値や最小値に着目しても、資産は減っていませんね。
このようなデータもあわせて考えると、4%という数字は非常に保守的だということがわかります。
FIREの資産を求めるうえで、4%ルールは非常に有効だといえます。
まとめ
- 4%ルールとは、インデックス投資の出口戦略
- 毎年取り崩す金額を、リタイア時に持っていた資産の4%(定額)とすれば、資産が底を尽きる可能性はほぼ0に近いという考え方から生まれた
- トリニティ大学の研究(トリニティ・スタディ)が元
- 日本でも4%ルールは有効
- FIREに必要な資産は、年間支出の25倍
実際にリタイアするときになると、必ず「資産が底を尽きないかなぁ」といった不安が生まれると思います。
そのために、4%であることの根拠を深く知っておくことは重要です。
なぜ4%であるかを理解しておけば、状況に応じて調整できるからです。
4%という数字にとらわれず、自分にあった出口戦略を考えるのもありだと思います。
また、成功率を100%に近づければ近づけるほど、投資ポートフォリオは非効率になるということも忘れないでください。
この記事のおさらい
毎年取り崩す金額を、リタイア時に持っていた資産の4%(定額)とすれば、資産が底を尽きる可能性はほぼ0に近いという考え方から生まれた戦略のこと。
95%
年間支出×25